チリー・ゴンザレスって知っていますか? 正直知りませんでした。「Never Stop」という楽曲がiPadのCMソングに採用され、2014年には、ダフト・パンクへのアルバム「Random Access Memories」への参加でグラミー賞を受賞。ラップ、エレクトロ、ピアノと多彩なスタイルと、破天荒なパフォーマンスと繊細なメロディで様々なミュージシャンにインスピレーションを与えて、世界を魅了してきたミュージシャン。らしい。
映画「黙ってピアノを弾いてくれ」は、そのチリー・ゴンザレスのドキュメンタリー映画です。
予告編を見ても刺激的な言葉が溢れ、破天荒さが強調されています。
チリー・ゴンザレスとは誰かを知らないのに、なぜこの映画を観る気になったか。予告編の「狂気の〇〇」好きなのかもしれません。「狂気の数学者」、「狂気の料理研究家」、「狂気のマッドサイエンティスト」…。厨ニですね。
黙ってピアノを…というタイトルのこの映画…はじまってすぐにラップ、ラップ、ラップ。ずっとだまりません。ステージ上の彼も、ステージ外の彼もずっとしゃべるかラップしています。売れない時代を経てそのラップで成功し、エレクトロの要素を取り込み、他のミュージシャンとの交流を重ねていくのですが、あるときから突然原点回帰。自分は黙って、ピアノに語らせるプレイスタイルを見出します。
なにか思いやきっかけはあったのでしょうが、初見では汲み取れませんでした。
カナダで最大の建設会社のCEOを父に持ち、兄もミュージシャン。成功することが価値のすべてという家族(少なくとも彼はそう思っていたようだ)の中で、自分が成功する道を必死で模索する執念が彼をああさせたのかなぁ、そして、何かのきっかけで原点回帰し、ピアノが語る彼のスタイルが確立したのかなぁ。
ただこの映画を観ていて思うのは、彼はきっとめんどくさいヤツだけど、何故かすごくいい人そう。根はきっと真面目なんだと思う。真面目に目指した道に一心不乱に進んだら「狂気」と言われしまったのかなぁ。ストイックさを追求していくとそういう境界線を越えてしまうもの、でも至極真面目という。
「黙ってピアノを弾いてくれ」というタイトルのこの映画、彼が黙っていたのはピアノを弾いているときだけ。結局曲が終わると黙ってはいませんでした。ラップをやっていた頃は痛々しい刺激だったものが、原点のピアノを弾くようになった後半では、とても心地よいパフォーマンスになっていて、観たあとも清々しい気持ちでいられる後味の良いドキュメンタリー映画でした。
まぁ、ズッカはヒップホップやラップがあまり好きじゃないんですがね。ピアノは嫌いじゃないです。