ウェス・アンダーソン監督の映画「犬ヶ島」を観ました。全編人形を使ったストップモーション・アニメです。
あらすじはこんな感じ。
今から20年後の日本では犬の病気が蔓延していた。メガ崎市では小林市長の号令のもと、犬の隔離政策が施行され、犬たちは「犬ヶ島」と呼ばれる捨てられた島に隔離されていた。川崎市長の息子、少年アタリは唯一の親友、愛犬のスポッツを探すため、「犬ヶ島」へ単身小型飛行機で向かう。なんとか犬ヶ島に不時着した少年アタリは、その場にいた現地の5匹の犬たちの協力を受け、スポッツの檻を発見する。スポッツはすでに死んでいた。失意の中アタリは犬ヶ島を去ろうとしたとき、亡骸は別の犬のものだと発覚。少年アタリは5匹の犬たちとスポッツを探すため、手がかりを求めて犬ヶ島の危険地帯に踏み込んでいく。
吹替版ではなく、字幕版で観ました。
字幕版ですが、この映画の登場人物は母国語を話します。つまり日本人は日本語で話すわけです。オリジナルが日本語で喋っているものを、劇中で同時通訳が翻訳していて、それに対して字幕がついているのが面白いですね。
またテキストも縦書きの日本語と横書きの英語が同時に表示されるのですが、フォントの選択、色、レイアウトなど、しっかりとアートディレクションされており、テンポもよく、音との相性もバッチリ。小気味良く観ていられます。
この映画を観て、というよりも予告編を見たときから思っていたのですが、緊張感と緩さが絶妙なバランスで融合しています。背景はほとんどが一点透視、キャラクターの向きはほぼ真正面・真横・真後ろ。そして聞き手の目線より更に話し手に寄っており、整然としたアングルで、緊張感をもたせつつも、表情豊かな人形たちのアニメーションとコミカルな表情で、観ていて疲れない画になっています。
一人で生きてきた、野良犬のチーフ、教師に飼われていた室内犬のレックス、野球最強野球チームのマスコットだったボス、CMモデルで、神戸牛の味が忘れられないキング、管理された食事や定期的なトリミングを受けて暮らし、噂好きなデュークなど、お話自体は単純ですが、メインのストーリーに5匹の犬たちのバックボーンが絡んできたり、ミステリアスな美犬が突然現れたり、人間側の社会でもマイノリティが元気だったり、ワサビ毒によって犬温和派のリーダーが毒殺されたり、ドラマにサスペンスにと思いの外楽しめます。
ちょっと引っかかったのは後半に出てくる過去のシーンで、恐れられていた犬たちが、自分たちの正当性を語るシーン。あまり説得力がない上、映画全体のトーン・アンド・マナーから外れているようなそんな気がしました。ただ、セリフの上だけで画的な表現もなく、基本的には楽しめる映画です。
この映画の予告編。実は映画館で見たときと、YouTubeで見たときの印象が違いました。映画館で見たほうがとてもスムーズに動いているように見えた気がしたのです。これはきっと映画館向きの作品なんでしょうね。
冒頭3分間はYouTubeで公開されています。
ウェス・アンダーソン監督 最新作/映画『犬ヶ島』予告映像